「パーソルキャリア」が挑む事業領域の拡大と、広告による新たな顧客接点づくり

千葉一生 小川治人様

語り手

パーソルキャリア株式会社
キャリア自律支援統括部 小川治人様

聞き手

ワンバース株式会社
代表取締役 千葉一生

人と組織の課題に向き合い、法人向けにキャリア研修や管理職研修を手掛ける“キャリア自律支援事業”を担う、パーソルキャリア株式会社のキャリア自律支援統括部。同事業では、サービスを必要とする企業との接点を広げるため、デジタルマーケティングによる新規リードの獲得に注力してきました。

ワンバースは、2022年8月から、当時キャリア自律支援事業を展開していたパーソルキャリアコンサルティング株式会社への支援を開始し、2025年4月のパーソルキャリア株式会社への事業承継後も継続して支援を続け、5年目を迎えています。Meta広告、Google広告、Yahoo!広告をはじめとしたインターネット広告運用やクリエイティブ制作を通じて、新規リードの獲得拡大に向けた取り組みを行っています。

今回、事業移管前後で生じた変化や、マーケティング施策を進めるうえで工夫してきたこと、ワンバースとの取り組みを通じて得られた成果について伺いました。

小川治人様

あらためて貴社のキャリア自律支援サービスについて教えてください。

小川:

私たちは、社員一人ひとりが自分のキャリアを主体的に考え、行動できる組織づくりを、企業向けに支援しています。

具体的には、それぞれの状態や段階に応じたキャリア研修に加え、部下のキャリア自律を支える管理職向け研修などを提供しています。社員本人だけでなく、そのキャリア形成を支える管理職や組織にも働きかけることで、個人と組織の双方が持続的に成長できる状態を目指しています。

パーソルキャリア キャリア自律支援サービス 公式サイト:https://co-development.persol-career.co.jp/

2025年4月、パーソルキャリアコンサルティング株式会社のキャリア自律支援事業が、パーソルキャリア株式会社へ移管されました。事業の対象やテーマはどのように変わったのでしょうか。

小川:

パーソルキャリアコンサルティング時代の2025年3月までは、主にミドル・シニア人材の活性化に取り組んでいました。将来的な課題を防ぐ予防的な支援と、すでに顕在化している課題への対処という、両面から支援していた形です。

2025年4月の事業移管を機に、対象をミドル・シニアに限定せず、「キャリア自律」を軸に、一人ひとりのキャリアオーナーシップ(※)を育む支援へと事業領域を広げました。
※ 個人が自分の「キャリア」に対して責任を持ち、主体的に考え、行動して築いていくという考え方や姿勢

現在は、DEIや女性活躍推進、若手社員の早期離職、管理職登用、管理職による部下のキャリア形成支援など、企業が抱えるさまざまなテーマを「キャリア自律」の観点から捉え、複合的に支援しています。

一見すると異なる課題に見えますが、その根底には、一人ひとりが自身のキャリアをどう考え、組織がそれをどう支えるかという共通の問題があります。そこに私たちが介在し、個人と組織の双方を支援していくことに、価値があると考えています。

小川治人様

事業移管に伴い、マーケティング面ではどのような対応が必要になりましたか。また、そのなかでワンバースはどのように関わりましたか。

小川:

事業をより拡大していく方針へと舵を切るなかで、マーケティング基盤もパーソルキャリアの環境に合わせて再構築する必要がありました。Webサイトでは、名称の変更に加え、サイトの改修やドメインの変更も発生しました。

ワンバースさんには、移管によって影響が及ぶ箇所と必要な対応を事前に洗い出していただきました。そのおかげで、広告計測や運用への影響を抑えながら移管できたと思います。

千葉:

Webサイトのリニューアルや移管で起こりやすいのが、計測タグの設置漏れです。新しいサイトに計測タグが設置されていなかったり、コンバージョン後に表示されるサンクスページのURLが広告運用側に共有されていなかったりすると、サイトの切り替えを境に計測が途絶えてしまうことがあります。

今回は、切り替え前に必要な確認事項を整理できたため、広告計測が途絶えることもなく、運用にも支障が出ませんでした。

小川:

Facebookページの再作成もサポートいただきました。広告レポートについても、営業日の考え方など、移管後の社内ルールや私たちのフォーマットに合わせて調整いただき、助かりました。

千葉:

広告側の対応だけでなく、マーケティング基盤全体の移行が必要ですよね。

小川:

そうですね。MAツールも移管の対象でした。Marketoというツール自体は変わりませんでしたが、パーソルキャリアの運用ポリシーに合わせる必要があったため、私たちの側でも、運用ルールや設定を一つひとつ見直し、作り替えていきました。

千葉一生

こうした事業領域の拡大によって、マーケティング面ではどのような変化がありましたか。

小川:

それまではミドル・シニア世代に焦点を当てていたため、事業領域の拡大に合わせて、これまでのマーケティング施策を一度整理する必要がありました。

誰に、どのような課題を切り口として情報を届けるのか。広告の企画だけでなく、実際のバナーでどのようなメッセージやビジュアルを打ち出すのかまで、改めて考え直す必要がありました。

例えば、若手社員の早期離職に焦点を当てるのか、女性活躍推進に焦点を当てるのか。それぞれ対象者や企業が抱える課題も異なります。限られた予算やリソースをどのテーマに配分すべきか、当時はまだ明確な答えがなく、模索している段階でした。

だからこそ、「どのテーマに市場からの反応があるのか」「どのテーマが私たちの事業と強く結びつくのか」を、実際の反応を通じて可視化する必要がありました。

移管直後の2025年は、さまざまな人事課題とキャリアとのつながりを整理しながら、私たちが特に価値を提供できる領域を見極めていく時期だったと思います。

小川治人様

注力すべき領域を見極めるため、広告施策ではどのような検証を行いましたか。

小川:

お問い合わせや資料ダウンロードの件数だけでなく、その先の受注につながりやすい最初の接点は何なのかを見極める必要がありました。

千葉:

事業領域が広がったことで、広告で扱うテーマも増えました。そこで、「ミドル・シニア」「キャリア自律」「キャリア研修」「キャリアカウンセリング」という区分に整理し、それぞれの予算と成果を把握できる形にしました。

どのテーマが問い合わせや資料ダウンロードにつながっているのかを、比較しながら検証できるようにした形です。

ワンバース制作バナー一覧

小川:

同時に、世の中のトレンドを追っていく必要もありました。「キャリア自律」というテーマも、言葉や考え方が広がる一周目を終え、企業が具体的な取り組み方を考える二周目に入りつつある、という実感がありました。

企業の人事部門が「キャリア自律」をどのように捉え、何に課題を感じているのか。営業部門はお客様との対話から肌感覚をつかめますが、マーケティングでは、広告を通じて、それまで接点のなかった企業からの反応も得られます。

広告はリードを獲得するだけでなく、市場全体の関心や変化を把握するうえでも、非常に有意義な取り組みでした。

千葉:

そうした市場の反応を探るため、クリエイティブの企画では「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」という考え方を取り入れていました。CEPとは、顧客が特定の状況や課題に直面したときに、ある商品やサービスのカテゴリーを思い浮かべるきっかけのことです。

同じサービスであっても、どのような出来事をきっかけに必要性を感じるかは人によって異なります。そこで、一つの既存ホワイトペーパーに対しても、異なる課題を起点とした複数の訴求軸を設け、広告への反応を検証しました。

小川:

理想をいえば、体制や予算が潤沢にあり、さまざまな課題に対応したホワイトペーパーを個別に制作して、それぞれ広告を展開できることだと思います。

ただ、現実には使えるリソースは限られています。そのなかでも、既存のホワイトペーパーを生かしながら、複数の訴求を打ち出すことができました。

限られたリソースのなかで、どの切り口ならより大きな効果が見込めるのかを考え、既存の資産を生かしながら検証できたことは大きかったと思います。

千葉:

実績面では、事業移管後に広告環境を再構築し、各媒体の配信を段階的に再開しました。その後も、テーマごとの反応を踏まえながら、運用調整やクリエイティブの改善を継続しました。

こうした取り組みを進めるなかで、配信再開直後の2カ月間と、その後の11カ月間を比較すると、平均CPAは70%以上改善しました。

小川治人様

そうして獲得したリードの質や、その後の成果は、どのように計測していましたか。

小川:

マーケティング施策を通じて獲得したリードは、営業部門のインサイドセールスへ連携するフローになっています。そのため、問い合わせや資料ダウンロードの件数だけでなく、営業部門へ連携した後の対応状況や、その後のプロセスまで確認していました。

具体的には、資料請求やセミナーなどの獲得経路ごとに、リードが営業側でどのように進捗したかを可視化し、成果を比較しました。その結果、資料請求経由のリードは、他の経路と比べて、その後の営業成果につながりやすい傾向が見えてきました。

広告以外では、新規リードの獲得や、すでに接点のあるお客様との関係づくりに、どのように取り組んでいましたか。

小川:

セミナーへの集客にも力を入れていました。すでに接点のあるお客様にはメールマガジンや郵送DMを送り、まだ接点のない企業に対しては、主に郵送DMを活用して新たな接点をつくっていました。

千葉:

郵送DMでは、どのような工夫をされていたのでしょうか。

小川:

一見して広告物と分かるようなデザインにはせず、あえて一般的な郵便物に見える封筒で送っていました。まず手に取って開封していただくことを意識したもので、実際に反応率も高かったです。

千葉:

明らかにDMだと、内容を見ずに判断されてしまう可能性があります。封筒の見せ方を変えることで、まず開封してもらう確率を高めたのですね。

小川:

メールについても工夫していました。一般的には、開封率やWebサイトへの送客率などを指標にすると思います。もちろん、それらも大切ですが、いずれも比較的短期の反応を測る指標です。

私たちは中長期的な視点でお客様との関係を深めることを重視し、あえて「クリックさせないメール」を意識していました。

千葉:

「クリックさせないメール」とは、どのようなものですか?

小川:

一般的なメールマガジンでは、内容を途中まで掲載し、「続きはこちら」とWebサイトへ誘導する手法があります。そこから資料請求やサービスページにつなげることが目的です。

ただ、それではお客様にページを移動していただかなければなりません。そこで私たちは、できる限りメールのなかで内容が完結するようにしていました。数分の隙間時間にメールを読むだけでも、キャリア自律について少し知識が深まる。そうした読者の満足度を優先した設計です。

千葉:

Webサイトへの送客を優先するのではなく、まずは読者にとって役立つ情報を届けることを重視していたのですね。中長期的な関係を考えた、顧客本位の取り組みだと思います。

小川:

一方で、メール内で完結させると、効果を定量的に評価しにくい側面はあります。社内への説明では、クリック数などの分かりやすい数字を求められることも多いと思います。

それでも、短期的な指標だけで判断せず、中長期的な関係づくりを重視する考え方を受け入れてもらえる組織だったことは、ありがたかったですね。

千葉一生

最後に、今後の広告にどのような役割を期待していますか。

小川:

AIやレコメンド機能の普及によって、自分の関心に合った情報を効率よく得られるようになりました。一方で、すでに自分が認識している課題の周辺に、情報との接点が偏りやすくなっているとも感じています。

これはマーケティングに限った話ではありませんが、自分が探している情報だけでなく、まだ必要性に気づいていない情報に、どうすれば出会ってもらえるのかを考えていました。

千葉:

情報を探しやすくなった一方で、自分の関心に最適化された情報のなかから抜け出しにくくなる感覚はありますね。

小川:

例えば、企業が「若手社員の離職を防ぎたい」と考えたときに、必ずしも「キャリア自律」というテーマにたどり着くわけではありません。両者のつながりに気づいていなければ、目の前にある離職という問題だけに意識が向いてしまいます。

そうした、まだ結びついていない課題同士をつなげる点で、広告は相性がよいと思います。例えば、広告バナーのなかで「若手社員の離職」と「キャリアオーナーシップ」という二つのテーマを提示すれば、「この問題には、キャリアという観点も関係しているのかもしれない」と気づいてもらうきっかけをつくれます。

千葉:

本人のなかでまだ結びついていない課題と考え方を広告によって提示し、新しい気づきを生み出すということですね。

広告には、ユーザーが自ら情報を探し始めるのを待つだけでなく、別の角度から課題の捉え方を提示できる役割があります。

小川:

「社員のモチベーションが低下している」といっても、その理由はさまざまです。その背景にキャリアの問題が関係していても、最初からその観点が頭に浮かぶとは限りません。

一見異なる問題がキャリアと結びついている可能性に気づいてもらえる点で、広告は非常に有効な接点だと思います。

千葉:

同じサービスであっても、異なる側面から価値を提示することで、ユーザーがそれまで認識していなかった課題や選択肢に気づくきっかけをつくれるのが、よい広告だと考えています。

Meta広告では、訴求によって反応する層も異なります。そのため、単純な獲得件数だけでクリエイティブの価値を判断せず、複数の訴求を用意し、異なる課題を持つ人との接点を広くつくることが重要だと思います。

小川:

そうですね。だからこそ、CTRやCPAだけでなく、広告がどれだけ表示され、どれだけの人に新たな気づきを届けられたかという側面も重要だと思っています。

交通広告に近い役割かもしれません。すぐにクリックや問い合わせにつながらなくても、目の前の問題を別の角度から捉えるきっかけを届ける。今後の広告には、そうした役割も期待しています。

千葉一生 小川治人様

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